「うつ病」を患っていなくても自分自身を守るために是非身に付けたい知識・思考_『「うつ」とよりそう仕事術』By酒井一太

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photo credit: Paolo Camera via photo pin cc

現在、厚労省の「患者調査」でうつ病・躁うつ病の患者数100万人を超えており、その対策が急務とされていますが、いまだその根本的解決策は示されていません。
所謂うつ病等の「心の病」の問題に関して一番難しいとされるのは、外傷と違い、他人から「病気」を抱えていることを理解してもらうことが難しいことが挙げられますが、これはパーソナリティ障害(パーソナリティ障害の方の多くは「うつ病」を併発しています。)を抱えていたパートナーと共に生活し、自分自身も潰れた経験から、まさにその通りだと痛感しました。
だから「全ての人に理解してもらえる」という理想ですが、自分のことはある程度自分自身で守る術を身につける必要があるのです。もちろん、そのこと事態「心の病」を抱えている方にとっては難しいことは、重々承知しています。

そんな時、酒井一太(@kazumoto)さんの書籍を拝見しました。酒井さんはうつ病により2度の休職を余義されなくなりながらも、見事に復職し、 寛解はしていないものの、うつ病と上手く付き合いながら一般の人と同等、いやそれ以上の成果をあげようと、仕事又私生活の面で様々な工夫をされている方です。
僕自身、うつ病と診断された訳ではありませんが、一度潰れた経験から、昔と同じようには働けないという意識はもっているため、酒井さんの仕事へのスタンス、思考は非常に得るものが大きく、また、うつ病の本人が周りの人にこうして欲しいという要望・助言を述べた書籍は今まであまり読んだことが無かったので、うつ病を抱える人を支える立場の人にとっても非常に役に立つ内容のはずです。
その内容の中で、特にひっかかった内容を紹介させていただきたいと思います。

綺麗事では生きていけない。「お金」は大事!

「心の病」に関する書籍等であまり触れられないけど、実は、かなり重要だと思うのは、「お金」の問題です。これは比較的年齢が若い方や、幸運にも身内で体調を崩された方がいらっしゃらない方にはあまりピンとこないかもしれませんが、非常に大切なことです。著者も

 休職期間中、最大の不安は、お金に関する不安です。~(中略)~「収入が断たれる」というのはとにかく恐ろしいことです。世の中お金がすべてではないとはいえ、お金が一銭もなければ生活していくことすらままならないのが現実です。(P48)

と述べています。僕も昔は「お金はある程度あればいい。それより好きなことやって生きたい!」という人生観を持っていましたが、精神障害に限らず、病気を抱えながら生きていくには、健康な人が普通に暮らしていくのに必要なお金以上に出費がかさみます。
よく「うつ病」を支えるという観点からは、うつ病の人への接し方などがまず重視され、「共感」「愛情」などといったキーワードがでてきますが、それも勿論大切なのですが、それ以上に「お金」はとても大切です。

 複数の病院に行ってみたり、高額な薬、新しい治療法を選択できたりと、打てる手立ての選択肢を増やすことができます。(P51)

まさにこの通りだと思います。「うつ病」を始め、精神障害については、ある程度原因が判明してきているとはいえ、いまだ不明なことが多いです。だからこそ、「お金」は精神安定剤以上に心の安定のために必要なものなんです。

「うつ」でなくても役立つ仕事へのスタンス・思考

仕事術・仕事効率化に関する思考やツール関連の書籍は数多く出版されていますが、主にいい意味で「頑張れる」人々向けに書かれたものがほとんどです。しかし、一度「うつ病」等になるとこの「頑張る」ということが難しくなります。しかし、人並(以上)の仕事をするためには、普通に「頑張れる」人たちと対等に渡り合う必要がありますよね。そこで、著者は仕事に対して無理をしないスタンスを提唱しています。

方法1:コップ自体を大きくする
方法2:コップの中身を小さくする(P78)

つまり方法1は「頑張れる」人向け。成長のため、自身に負荷をかけ、キャパを大きくする方法ですが、これはうつの人には体調を崩すリスクがあります。それよりも、仕事の時間・労力を圧縮し、無駄を省くことを常に考えるアプローチで仕事をすることが大切になります。
その他にも普通の人のように、日割りでタスクをこなしたり、締切間際の火事場のバカ力を期待することが難しい人は競馬の逃げ馬のように、調子の良いうちに出来るだけ仕事を進めることにより安心感を産むという「大逃げ」のアプローチは、普通に仕事が出来ている人にとっても、有効なスタンスではないかと思います。
また、うつ病の人は、どうしても思考が「落ちる」時があります。そのような思考がマイナスに陥りそうになったときの思考の転換方法も、とても参考になりました。
例えば、「落ちる」という表現は暗いイメージがあるから、言葉を変え、「今はバネを縮ませて、力をためてる状態なんだ!」と考えるバネ思考、苦手な人はじっくり観察して、苦手タイプごとに自分なりにタイプ分けをして危険を回避するレッテル貼り、「頑張れ」「諦めるな」といった地雷ワードを言われたときは、言われたのは自分ではなく他人(物)と道具に転嫁する方法(とても分かりやすい例が挙げられていたので、下記1つ引用させていただきます。)

・文章が間違えていることを指摘された

日本語返還に転嫁しましょう。(P135)

また、そもそも思考は落ちないように、前もって全てのケースを想定して、様々なバックアッププランを考えておき、心の余裕を確保する、不安要素が感じたら、一端マインドマップを使い時間毎に記録しておき、とりあえずその不安な気持ちを脇に置いておくなどの方法は、うつ病とまではいかないまでも、ついネガティブ思考になりがちな僕のような人間には、気持ちを落とし、仕事の効率をまで落としてしまわないためには有効な方法だと感じました。

うつの人への接し方とカミングアウト

本書の特徴として、「うつ病」を患っている著者だからこそ分かる、うつの人は他の人たちにどのように接してほしいのか、どのように接するべきなのか、という切り口で書かれた部分があることです。
例えば、前述したように「頑張れ」という言葉が「地雷ワード」として、うつ病に人に対しては言ってはいけない言葉の一つであることぐらいはご存知の方はいるかもしれませんが、会話の出だしとして、

「元気そうだね?」よりも「調子はどう?」

というほうが良いことや、単純に声をかける回数を増やすことが有効だといったことなど言葉の問題。また、勤務する会社に対しての要望として、時短勤務が有効だけど朝の出勤時間は固定にしたほうがよい、仕事量としては入社2年目ぐらいの人の仕事料が丁度いいなど具体的で分かりやすい例が挙げられています。
しかし、この会社に対しての要望に関しては一点問題があります。それは、会社の人々に自分が「うつ病」であることをカミングアウトし、理解してもらう必要があることです。この点に関しては著者も異論・反論を認めつつも、

うつ病は隠すべきことでも、隠しきれる病でもありません。
むしろカミングアウトしてしまったほうが良い類の病気です。(P96)

と述べています。僕もまさにこの意見に賛成です。「うつ病」を隠しつつ、仕事をすることは多大な負担になり、病気の回復を妨げる一因となりかねません。
ただし、ただしです!
悲しいかな、世間は意外と冷たいです。というか、あまり他の人に気を回す余裕がないというのが正直なところだと思いますが、話題になっているわりには、いまだに理解されないことが多いのが現状です。実際、僕のパートナーは精神障害が会社にバレて派遣先からクビになりましたし、僕自身も会社に事前に相談していたにも関わらず、パートナーの自殺未遂騒動があったことにより正社員でしたが自主退社に追い込まれました。
だから、カミングアウトするのが理想としては正しいですが、それぞれの会社の状況や、自身の置かれている立場等を考慮し、慎重に行動に移すことも必要だと思います。


冒頭にも書きましたが、うつ病患者は年々増え続け、現在では通院している人だけで100万人を超えています。もちろん、そこには通院していないで通院したいが出来ないで我慢している人、そもそも自分はうつ病ではないと考え通院していない人がいるであろうことを考えると、実情はとても深刻な状況です。
にもかかわらず、いまだに精神障害の方に対する風当たりが激しいには、やはり、「うつ病」がどういった病気なのかという理解不足、そしてどうやって接するべきなのか分からないということ。
一方で、「うつ病」に苦しんでいる人たちも、仕事に復帰するためにはどのような手順で進むべきなのか、復職した後はどう仕事と関わっていけばいいのか分かっていないことがあるのではないでしょうか?

復職はゴールではありません。その先が重要なのです。

と訴える著者の言葉通り、「うつ病」を克服するという方向ではなく、「うつ病」を抱えつつも、「どうやってら健康な人と互角に戦えるか?」というアプローチは非常に有効な方法だと思いました。

酒井さんが主宰するブログ「Find the meaning of my Life.」
http://kazumoto.jp/
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